神田昌典という方をご存知でしょうか。マーケティングのコンサルタントというと軽く聞こえますが、今や経営者の中ではかなり有名な方になっています。彼の亜流のコンサルタントは雨後の筍のように出てきており、悲しいかな、塾業界にも完全なる模倣者がいらっしゃいます。
よく、私にも神田氏のことを教えてくれる方がいらっしゃいます。ちょっと困る瞬間なのですが、実は私、彼が初めて本を出し、募集をした「顧客獲得実践会」の初期3000社のメンバーの一人でした。最初の最初からではありませんが、たまたま書店で見かけた彼の本を手に取り、それが「仕掛けられたこと」であることに感動し、すぐに実践会入会を申し込み、送られてきた資料をむさぼるように読み漁り、4巻のVTRを擦り切れるほど見て、顧客を増やすこと、つまり我々からすれば生徒を増やすことについて勉強をしました。本当に「むさぼるように読み漁る」という言葉が正しいと思います。
そして、毎月送られてくる「実践ニュースレター」を読み、教えを受験勉強のように学んで、チラシをどう作るか、何を訴えるのか、会社をどう作って行けばいいのか、どういうミッションを会社に持たせるのかなどなど、会社の動かし方、収益の上げ方、顧客の獲得の仕方など、本当に私の「経営」人生の半分以上を教わった方なのです。
もちろん、彼は私のことなど知りません。しかし、彼は私の大先生。このスキルを身に着けたからこそ、千葉の塾を閉鎖し、東京へ移転しても「何とかなる」という自信がありましたし、「生徒が少なくても、必ず増えていく」という確信があったのです。今後も、どこかへ行っても、きっと商売をすることは出来るでしょう。自画自賛になりつつありますが(笑)、そういう「実力」を着けて頂いた方です。
コンサル業務は順調、ステータスも上がり、超有名人になって行った彼。実践会もある時を境にストップし、新しい活動も数多くされていました。しかし、彼にも試練が訪れます。皮膚がんの一種に侵され、仕事どころではなかった時期があったのだとか。しかし復帰されて、また最近は昔のニュースレターのエッセンスを書籍化されたりしています。
さて、そんな神田氏が、先日、栃木県立宇都宮白楊高校の全校生徒900名の前で話した講演記録が書籍化され、出版されました。タイトルは「成功のための未来予報」~10年後の君は何をしているか~です。10年後の自分など想像しながら生きたこともなかった10代の自分。しかし、ある面では、そういう話をしてくれる大人がいなかったとも言えます。私がお金を払ってでも聞きたい方のお話を、高校生諸君が聞くなんて、ものすごい体験だなぁと、一人で羨ましがっていましたが、書籍でこれを追体験することが出来るので、有難いことです。
さて、彼が繰り出す「未来予報」はとても興味深いものです。「未来予測」ではなく、「予報」だということが重要で、「必ずそうなります」と確信めいたお話であるのです。
彼の予報は、①お金がなくなる②会社がなくなる③病気がなくなる④国境がなくなる⑤学校がなくなる⑥貧困がなくなる⑦制約がなくなる、の7つでした。
この中の、②会社がなくなる、と、⑤学校がなくなる、は、私はある意味ものすごく実感を持って受け入れることが出来ました。いくつか「正論だな」と感じた部分をご紹介しましょう。
神田氏は、②の中で、「言われたことをやっていれば、給料はもらえるという考え方をしているかぎり、どんどん給料は下がり、生活は苦しくなっていきます」と述べています。
今、若者達は「就職できなかったら人間のクズ」だと言われながら、ある種の「強迫観念」に基づいた就職活動を繰り広げていますが、それは若者の「安定志向」「寄らば大樹の陰志向」ではないのです。完全に「親の志向」です。しかし、時代は変わりつつあります。つまり上記のように、会社に入って仕事さえすれば安定するという時代ではなくなっていますし、給料は下がる一方。若い人には才能を生かすしごとを作って行ってほしいと思います。神田氏はこう言います。「才能のない人は、いません。絶対に、いないのです。それを見出すことをやめた人、もがき続け、転がり続けることをやめた人がいるだけなのです」と。肝に銘じたい言葉です。
また、⑤においては、国の独占事業としての「教育」がなくなると言っていますが、実はこれ、私が就職活動中に、今はもうなくなってしまった会社の社長が同じことをおっしゃっていました。専売公社、電電公社、国鉄、そして日本郵便。みんな国の独占企業は民営化していきました。最後の独占事業が「教育」。これもいずれは「民営」になっていくという「予言」をされていましたが、神田氏の「予報」はちょっと視点が違います。
学校という形態をとらなくても「学習できる」時代になったということが、「学校がなくなる」の本質です。ある国について論文をまとめたいと思えば、Facebookでその国の人とつながればいい、無料でいいから自分の経験や技術を教えたいと言う人が世界中に山ほどいるということなのです。だから、学校である必要性がなくなるというのです。確かにそうなのかもしれません。大人が「学校」にこだわっているだけで、実は子どもたちは新しい形態にすぐ順応します。桜学舎でも家庭学習用の映像配信を始めていますが、大人は映像授業に少々懐疑的ですが、子どもはデフォルトでネットも携帯もあった時代の子。抵抗なく映像を見て頭を働かせています。もう我々とは、「時代が違う」のだと思います。PCなども扱いも、子どもには全くかないませんから…
「そんな、私、頭良くないよ…」「無理だよ」と言いがちな人にも、「なぜそんなに自分が出来ないことに完全な自信を持っているのか、さっぱり理解出来ません」と言います。確かに、確かに!
【成功のための未来予報】
神田昌典/¥1,200/きずな出版
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