Happy Endにしなければいけません

中学受験。なかなかデリケートですね。
いろいろな指向があって、いろいろな思惑があるのが中学受験。特に親御さんの意向がとても大きく反映されるのが特徴ですから、私達も親御さんの指向にはご無理は言いません。ですので、ウチの方向性とお考えが異なる場合は素直に「大手塾さんへ行って下さい」とお勧めします。

ただ、大手の塾を辞めてくる方がいらっしゃるのも事実です。
今春は家庭教師から1名、大手を辞めて来た方が2名。FC塾を辞めて来た方が2名。ですから、結構な数の「転塾組」がいます。

大手をやめる、その原因はズバリ、「ついて行けない」というものです。
聞けば、某大手さん。確かに通塾日数は桜学舎と同じ週3日ですが、授業時間は1時間多いですし、宿題や課題が出来ていなければ夜9時・10時まで居残りがあるのだとか。内容も難しいので、お父さん・お母さんでも苦戦するレベル。上位の中学をゲットするにはこんな苦難が待っているのです。もちろん、それなりの自覚と努力、それに全てを捧げる覚悟があれば結構なことなのですが、どうもそこまでは出来ない… 付き合いきれない、やりきれない…というのが正直なところですし、最上位を目指すならこういう努力も必要でしょうが、近隣の私立中学へ入るなら、そこまでやる必要も無かったりします。

大手塾の入塾説明会に行くと、大抵舞い上がってしまうのは保護者です。
「やるからには最上位を目指さなきゃもったいないです」
「小学生のお子さんには未知なる力があって、可能性は無限大です」
「最高の努力が出来る環境を与えるのが親としての使命です」
なんて言われて、我が子も麻布・開成、桜蔭・女子学院に入るのではないかと大手塾ライフを決意するのでしょう。しかし、現実問題、我が子は一番下のクラス。それでもついて行くのが必死。数ヶ月でギブアップというのはよく見かける姿です。

ここでギブアップしてくれて、すぐに桜学舎へ駆け込んでくれればまだいいのですが(笑)、「我が子が悪いんじゃないか」「親のサポートが足りないんじゃないか」と、我慢して、無理して頑張ってしまうケースもかなりあるのでしょう。いや、相当数、ほとんどがそうなんじゃないでしょうかね。

以前桜学舎にも問い合わせが多かったのですが、「大手塾の補習をしてくれ」と個別指導塾に通うケース。今は完全にお断りしているのですが(先日もお断りしたケースがありました)、塾のために塾に行くのは本当に「不毛」だと思いますが、実際背に腹は代えられないというケースはあります。入試直前期には駆け込み需要が相当あるのだと聞いたこともあります。

「2年も3年も通って、その学校に入るのに、直前にまだ補習塾へ?」
と思わざるを得ないケースもありますが、先ほど言ったように「背に腹は代えられない」ケースというものもあります。それは、中学受験があくまで「ゴールではない」という理由だからです。

中学へ入学して、学歴レースが一応の決着を見るのであればいいのですが、勉強は中学・高校と続き、来るべき大学入試が待っていて、その先まだまだ専門教育が待っています。中学受験は言わば「スタート決め」でしかありません。この時点で、「俺はダメだった…」「ついて行けなかった…」「私は馬鹿だから…」「この学校しか行けなかった…」「落ちたから地元の公立へ…」 こういうのは全て子どもの心に「敗北感」が残るのです。これ、大人が思っているより厄介なケースが多いですよ。

大手塾を辞めて桜学舎に来る子に、一番最初にやらねばならないことは、保護者はもちろんのことですが、生徒達の考え方をしっかり変えることです。少なくとも「敗北感」を持って、「ダメだった感」を持って桜学舎に来ますから、「そうじゃない」という気持ちを持たせることが何より大事です。

「心からその最上位の学校に行きたいと願っていたの?」
「授業が分かったふりをしていなかったの?」
「トップを目指さない限り、あんな難しい問題はやらなくていいんだよ?」
「トップ以外だっていい学校、価値のある学校は山ほどあるんだよ?」
「自分に合った学校を探して、中高でまた頑張ればいいんだよ?」
「中学受験はゴールじゃないんだよ?」

私達の話を聞いて行くと、生徒達は少し「解放された」感があります。ホッとした表情になります。成績の伸ばし方だって一緒です。最初からトップを目指すのではなく、基礎から積み上げて行って、最後にトップ近くへ行けたらいいじゃない?というと、それだけで子どもは、
「今日残って宿題やって行ってもいい?」
と言い出します。そういうものですよね。
「分からないから、出来ないから居残り」ではなく、自分で「分かりたい」「やりたい」と持って行かせることが大切だと、桜学舎ではそう考えているのです。

大手塾で中学受験を経験し、納得いかない学校へ進学した子というのが、意欲が低下した段階で桜学舎へ来るケースもあります。成績が下降気味で親御さんが焦るんですね。これがまた上手く行かないものです。とにかく勉強に対して投げやりで、諦めていて、「どうせダメだもん…」的な開き直り。皆、面白いほどこんな共通点があります。少し我々に心を開いて話し始めると、決まって「親に対する愚痴」です。ほぼ間違いなく親の愚痴が始まります。受験したかった訳じゃないとか、親が受けろと言った学校を受けたとか、今の学校は親が選んだとか… もちろん、現状が上手く行かないのを親へ責任転嫁している部分もあるのでしょうが、ちゃんと受験に対するスタンスを「教育」されていないとこういうことになります。これは親の教育というより、「塾の教育」なのかも知れません。桜学舎では、一般的な親の愚痴程度は許すものの、「親のせいで~になった」などと言おうものなら、私に叱られますからね。ただ、こういう意欲低下を起こしては、せっかくの受験も台無し。何の意味もなさないことになってしまいます。

中学受験自体をやめてしまったというケースもあります。これがいろいろある中で最悪のケースでしょうね。かくいう我々の生徒でも、大手塾に通い6年生の夏で挫折したという子もいますし、6年生の秋に受験を止めた子もいます。いろいろな理由がありますが、ほとんどの場合が
①本人の疲弊
②親の意向
のどちらかです。本人の疲弊は4年生以前からガチンコで受験勉強をしている子に多いケース。疲れちゃうんですね… ②は父母間、もしくは親子間のコンセンサスが取れていないケース。結局半ば自暴自棄にな って受験を止めるみたいなことが結構あります。

しかし、これがなぜ最悪かというと、「やめたんだ」という傷が残ることになるからです。
「中学受験をしようとしていたけど、途中で止めたという事実を消すことは出来ません。無かったことにも出来ません。もちろん自分の中で。このリタイヤ感が結構引きずるのです。どうしても「途中で逃げた」「受験出来なかった」という傷を引きずり、やめて後々成功した話を聞かないのです。大人が思っている以上に子どもはこういうことで深い傷を負うもので、成人したあとに「あの時…」なんて恨み言を言われたという話も聞いたことがありますよ。だから上手にケアしないと大変です。

少なくとも「中学受験をしよう」と思った時点で、途中で止めるというのは止めた方がいいのだと思います。だったら最初から受験する予定は無かった…とそのまま公立中学校へ行った方がよほど幸せだったのでしょう。でも、「中学受験をしよう」と思ってしまった方は、実際の受験までその意志を全うしたほうが子どものためにはいいと思います。

ただ、落としどころを決めておく必要があるということです。
受験で、子どもに何を学ばせたいのか、何を得させたいのか、それをしっかり大人が決めておくことが重要です。

そしてもう一つ、絶対、絶対重要なことがあります。
それは必ずHappy Endにしなければいけません。
受験が終わって、

「オマエが努力しないからこんな学校になってしまったんだ」
「やる気が無いならやらなきゃ良かったんだ」
「他の塾に行っていたら第一志望に受かったんじゃないか?」

こういうことで受験を終わりにしてはいけません。必ず、

「頑張ったね」
「いろいろあったけど、よかったね」
「さぁ、新しい学校で次の目標に向かって頑張ろう!」

そう言って中学へ入学させてあげなきゃいけないのです。

そのためには、滑り止めとはいえ行きたくもない学校を受験してはいけませんし、よく知らない学校を塾の先生の言いなりで受けてもいけません。偏差値だけで受験校選びをするなどもってのほか。思い入れのある学校、もしかしたら通うかもしれない学校…そういうところを選んでもらう必要があります。

もう既に、
「中学になっても桜学舎はやめないよ」
「中学からはね、英語と数学の2回来る予定~!」
と宣言している小6受験生が何人もいます。中学受験がゴールでもなく、中学高校でも勉強するんだということを、桜学舎の中学生や高校生と交流することでよく学んでいる子達だと思います。

これから大変な時期に入ってきますが、もちろん全力で頑張らせます。頑張ることが何より大事だと思いますし、今年の夏合宿でも「頑張るは正義」と言っていましたしね。

そして、全員がHappy Endで次のステージへ進めるよう、2学期も頑張ります!
それこそが、上っ面ではなく、子どもの可能性を十分に伸ばして行くことなのだと信じています。

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