虚しい勉強はやめよう

 同じ学校に通い、同じ教材で勉強し、同じ授業を受け、同じテストを受けても、出来ること出来ない子がいます。大変不思議なことですが、それを世の多くの方々は「個々の能力の差」としてきました。それぞれの個性であるから、その差はいかんともしがたいものとして、差自体を認めるゆとり教育に象徴されるように「能力差があってもいいじゃないか」という風潮が出来上がりました。しかし、差を埋める努力をどこかへ置いてきてしまったようにも思えます。

 能力差があっても、中間・期末テストや高校・大学の入学試験は以前と同じですし、テストが個々の能力別に作成されるわけではありませんから、何とかこれをクリアしなくてはなりません。今、多くの子ども達の勉強に対するモチベーションは、「クリアすること」、つまりその試験を何とか「すり抜ける」「くぐり抜ける」ことになってしまっています。

 しかし、勉強の本質はそれとは全く異なるもの。数式にはきちんと意味があり、英文法にはルールがあり、漢字には成り立ちがあって、歴史には必然性があり、科学には法則があるわけです。「なるほど!」「そうだったのか!」と思えたことは忘れずにいますし、反対に無理矢理「記号」化したものはすぐ忘れます。目先の試験を「すり抜ける」ために一夜漬けをして覚えた知識は、決して生涯にわたって覚えているようなものにはならないのと同じことです。ですから、目先の試験のための勉強を繰り返していても、基礎学力が向上したり、本当の力が身に付いたりすることは無いのです。世間で「頭がいい」と言われる人は、このような付け焼刃の勉強を繰り返してはいないのです。

 ですから、「~に合格する」→「そのためにはこの勉強をする」という思考は、一見正しそうに見えて実はそれほど成功例が無い学習法です。

「~を勉強する」→「そうすると~に合格する」という積み上げ式のステップを踏む方法論や心構えで勉強しないと、「これは関係ないから知らなくていい」などと、最低限の知識のみで難関をクリアしようとする思考に陥ります。勉強を「最短距離」でクリアしようとするのは、正に「受験ゲーム」です。では、子ども達は受験ゲームの勝者になることが果たして必要なのでしょうか。

 現在、大学生の就職活動が非常に苦しいものとなっています。一部の上位大学の学生は多数の内定をもらい、中堅以下の大学生達は苦戦しています。それだけを見ると確かに受験ゲームの勝者になる必要がありそうに思います。しかし、上位大学の学生間でも大きな格差があり、一人で多数の内定をもらえる学生と、そうでない学生がいます。その違いは、「本物の力を持っているか否か」なのだそうです。企業も「名ばかり大学生」や、実力が伴っていないのに大学生になっているような学生をふるい落としているのだと聞きます。入試を上手くすり抜けて来ただけの「受験ゲームの勝者」は、残念ながら企業では必要とされていないのも事実なのです。受験は上手くいったけれども、大切な就職という場面で惨敗している学生も多く見られるのです。

 勉強の本質を、そして勉強する意義を、キチンと諭し、習慣づけ、教えていきたい。それが創立以来我々が目指してきたことです。それはあまりに愚直すぎたかもしれません。

 「次の試験で成績を伸ばせばそれでいい」という方には、「あの塾は伸びない」と思われたかもしれません。生徒を勉強漬けにし、強制的にものを覚えさせれば確かに次のテストの成績は上がります。私達もプロですから、やれと言われればそんなことはスグに出来ます。しかし、私達はもっと根源的なところから教育していくべきだと考えています。それは「なぜそうなるのか」「その意味は何なのか」というところから、「勉強に対する態度」や「生活習慣」「学習計画」「進路の設計」に至り、つきつめていくと、「ご両親への感謝」や「どんな大人になりたいのか」「自己分析」等々。

 「塾は勉強だけ教えるところ」だという認識ではなく、「私教育の場」として、学校とはまた別のアプローチで子ども達を「ちゃんと考える子」へ育てていきたいと考えています。教育に「教」と「育」があるとすれば、私達は「育」を重視する稀有な塾であると思います。

 大人になって疲弊してしまうような「トップ」でなくてもいい、無機質な暗記で乗り切った「受験ゲームの勝者」じゃなくてもいい。きちんとした「意味」を考え、学ぶ意欲を持ったある意味「文化的」な生徒を育てていくことを桜学舎は目指しています。

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