教育評論家にして法政大学で教鞭をとる尾木直樹氏(尾木ママ)が、世界大学ランキングで日本の大学の順位が大幅に落ちたことを嘆いているそうです。氏によると、東大が43位(昨年23位)、京大88位(昨年59位)からガタ落ちなんだとか。それはかなりガッカリの結果なんですね。この結果を受けて、氏は、日本の高校生たちに「世界に羽ばたけ」とエールを送り、日本の大学だけではなく世界に目を向け、幅広い進路を視野に入れることを勧めています。
さて、そんなことから考えられるのは、日本の教育の現状。
日本の学校って、どうして「教育の再構築」=「管理教育を強めること」になってしまうのかなぁ?といつも思います。この言い方が正しいニュアンスで伝わるかはちょっと疑問で、私の表現力の稚拙さと貧困さを嘆かざるを得ないところもあるのですが、管理教育というか、システム化というか、生徒をガチガチに縛ってしまうというか、アリバイ作りというか… 何と表現して良いのかわかりませんが、なんとなくそんな方向へ進んでしまっている気がします。
ご存知の通り、ゆとり教育の大失敗が明らかになり、時代は「もう一度ちゃんと勉強させよう」という方向に来ています。そして「国際化だ!」と。それについては大筋で同意はできるものなのですが、だからと言って、「特進クラスで3年間鍛えて有名大学を目指す」「1日7時間授業+0時限目の授業で徹底的に特訓する」「放課後は予備校の先生が来て入試対策授業をする」という方向へ流れてしまったのは如何なものかと思います。入学式の日に目標大学を決めろと言われた子さえいます(笑)教育内容も手が加えられてはいるのでしょうが、主にこの「システム」や「学習時間」「カリキュラム」をイジることで「改革が進んだ」とされることには、現場の人間としては大きな疑問を持たざるを得ません。
高校生はこんな状況なのですが、ことは大学生に至っても同じようなことが言えて、まさに尾木先生の所属する法政大学などは最たるものなのですが、一時期の「勉強しない大学生」が問題となり、もっと勉強させようという方向に至ったのは良いことなのでしょうが、結果的にそれは「授業時間数の確保と授業実施の厳格化」という、ある種の「アリバイ作り」の方向へ進み、授業時間数の確保という面から、軒並みどこの大学でもこのシルバーウィークは平常授業が行われたようです。国民の休日や祝日に授業を実施することが大学の教育内容の充実化だという方向に流れているのは、どうも安易な発想にしか思えず、むしろ一般的な発想からすると疑問しか残らないものとも言えます。朝から晩まで授業で縛りつければ「勉強させている」ということになるのは、そもそも大人として成長し切れていない幼い学生を青田買いして大学に入れてしまったことにより、低レベルな拘束で「やるべきことをやっている」という形だけを取り繕っている感もあります。
こういう発想を全て包括して表す言葉がなかなか見つからないので、それを「管理教育」とここでは言ったのですが、そういう教育にはどうも私は「未来」を感じないのですが、いかがでしょうか。大学生にもなって、朝から晩まで授業漬けにされてやらされなきゃ知的活動が出来ないなんて、どうも寂しいものです。
もちろん、私の大学時代みたいなグウタラなロクデナシではダメなんでしょうが、それでも授業、授業に追われるのではなく、自分で本を読んだり、考えたり、体験したりという、高校時代までとは異なる時間の使い方ができることが大学での学習や知的活動の最大のメリットだったはずです。大学生にもなって、「やらされる勉強」「お膳立てされないとできない生徒」なんて、信じられないというのが私の思い。自分で考えて行動できる生徒を育ててこなかったのかよ…と思ってしまいます。幸い、私の教え子は、私に影響されてか、うちの講師陣に影響されてか知りませんが、「考え」て行動する派になってくれているので嬉しいのですが、それでも真面目に朝から晩まで授業に出ていると時々心配になったり、それでも大学生かよ?とからかわれたりします。
これには、別の角度からの問題点もあり、今や同じ大学・学部でも、学生間の相当なレベル差が生じているのです。最近多い、「推薦入試」「AO入試」というやつで入ってくる学生のレベルが、一般入試で入ってくる学生とは大きく開きがあるのです。正直、「君でその大学に入れちゃうの?」というような子が、推薦やAOを使えば見事に合格を勝ち得てしまうことは多々あります。
また、ご存知かどうかは知りませんが、多くの私立高校の上位クラス、いわゆる特進コースなどというようなクラスでは、「推薦・AOは使わせない」という方針が貫かれています。一般入試で上位大学へ合格できるようにするのがこの上位クラスの使命。よって、安易に推薦入試に逃げることがないように指導されます。すると、推薦・AOで有名大学に入るのは「普通クラスの真面目ちゃん」というということになります。この場合、よく逆転現象が起き、上位クラスの子が一般入試で失敗して中堅大学へ、普通クラスの子が推薦入試で上位大学へ…などという結果になることはどこの学校でも起こっています。果たしてそれがその子の人生において良いことだったのか、また大学にとっても良いことだったのかは、大いなる疑問です。特進クラスだから推薦は使わせないというような一律の指導も極端すぎるなぁと感じます。また、本来その大学の学力基準に満たないような子が、学校の内申点だけで上位大学へ合格できてしまうシステムもいかがなものなのかなぁとも。残念ながらそういう子は、真面目に授業に出て、真面目に勉強はするんですが、高校生の延長としか思えないところもあって、学習の質が変わらず、システム的にお膳立てしてもらわないと何をどう学習していいのかわからない子が多かったりするのも事実です。
高校時代まで、全て勉強する内容も、ボリュームも、時間も、大人基準で決められて「管理」されてきた学生たちにとって、大学に入ってから重要なものは「内省の時間」だと私は思っています。自分で考える時間、自分に向き合う時間、いわゆる「自分探し」に近い時間をきちんと持つことが重要だと思います。これが無く、無為に時間を過ごしてしまうと、ただカリキュラムをこなしただけで大学の門をくぐってきただけの学生が大量生産されてしまうように思います。
真面目に授業に出ている大学生たちには、「真面目ちゃんだなぁ…」とからかうことがあります。桜学舎の生徒にも、ものを覚えるだけではなく「考
えろ」と言ったりします。もちろん外部から知識を吸収することも大切ですし、知識の無い人間は考えることは出来ないのですが、時には自分の時間を作り、自分で自分を見つめ直し、物事を深く考えたり、読書をしたり、様々な場所へ出かけて行ったり、思考したりする時間というのが必要で、今の学生たちに足りない要素でもあるのかなぁと感じたりします。なぜ足りないのかは、そういうことが大切だという教育を受けてこなかったということと、時間やカリキュラムに追いまくられる管理教育ばかりを受けてきたという理由があるのだと思います。
塾、予備校のいけないところでもあるのですが、何でもかんでもお膳立てをしてやってあげてしまうという教育環境は、決して子供を成長させるものではありません。これが今や学校ですらそうなってしまっているところもあるのが問題です。
私はバリバリ管理教育だった千葉の出身。しかも年代的にも管理教育全盛期でした。しかし、高校は東京のリベラルな学校に進んだため、自分で考えることの重要性をかなり言われました。自由な学校だったために、他校に比べて自由な時間を確保することもできました。それがとても貴重だったと感じます。
管理教育に未来はあるのかなぁ? 子供の成長をにはあまりいいこともなさそうな気がしています。
もちろん、全くの放任も困りますが、考えること、思考すること、そういう時間を取ることができる、真の意味での「ゆとり」教育が必要だと思いますし、そういう知的レベルの高いことを促すことができる教育の質を、もう少し考えていく必要があるのではないかと思います。
まぁ、口ではなんとも言えますが、実際はとても難しい問題ではありますが。
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