このところ、久々に小説を読んでいます。もともと読書はしていたクチですから、小説ももちろん読みます。ただ、皆さんのように崇高で知的ではなく、俗物である私は「乱読」に過ぎませんので、偉そうな書評も書けませんし、そもそも作品自体を評することなど出来ません。ただ、興味に従って読みたいものを読む、それだけなんですね。お恥ずかしい限りですが。
さて、そんなわけで、最近は仕事に必要な本を中心に読んでいましたので、小説はどうしても後回しになってしまっていました。積ん読になっている本がかなりあるのですが、その中には小説がいくつも入っています。面白そうだと買うのですが、どうしても必要に迫られて「経営者の心得」とか、「何とかマーケティング」だとかそんな本を優先して読んでしまうのです。
実は、小説を読む時間というのはとても大切な時間で、「良質・上質な時間」だと思います。ある意味、リアルな世界から小説世界へ移入することができるわけですから、その余裕があること、またその時間を確保できることが条件になってきます。つまり、いくら仕事が忙しかったり、いくら日常生活で疲れていても、小説を読む時間だけは自分が魔法使いにもスーパースターにも、そして世紀のプレイボーイにもなれるわけですから(笑)、自分を解放してやれる時間なのだと思います。私のように、どこからどこまでが仕事で、どこからどこがプライベートなのかも分からないような人間は、ある意味生きている時間がどこまでも連続性を持っているので、うまく生きないと時間の上質性を保てない気がします。
ただ、何となく読みたくなったこの小説。 新田次郎の「怒る富士」です。
宝永四年の富士山噴火の時の江戸幕府が舞台。
気になりませんか? 箱根が小噴火をし、口永良部島の大噴火、先日の桜島の警戒レベル急上昇、そして阿蘇の噴火。忘れがちですが、浅間山も小噴火しているんですよね? 西之島は延々と巨大化を続けていますし、海水域の変色も見られるとか。その他、各所で火山性地震だの微動だのと言われています。富士山が噴火するとも言われて久しいですが、いよいよ何となく現実味を帯びてきたような気がしていました。富士山も立派な活火山ですし、江戸の宝永年間には脇っ腹から噴火してるんですよね。
あくまで時代小説なのですが、新田次郎の作品はかなり歴史的な検証がなされ、事実に基づいた内容で小説が描かれているものが多くあります。古くは「八甲田山死の彷徨」「アラスカ物語」「縦走路」「銀嶺の人」などが有名です。私は母の影響で結構新田次郎作品は読んでいます。「火の島」「蒼氷」「強力伝」なども高校時代には読んでいました。「蒼氷」の中に収録されている「神々の岩壁」という作品は夢中になって読んだ記憶があります。のちの入試問題でも出会ったことがあって、嬉しくなったものです。
「怒る富士」は実はノーマークだったのですが、ふとしたきっかけから、やはり富士山噴火に興味を持ったところ、この作品が出てきて、新田次郎なら!と思って早速取り寄せて読み始めました。さすがに時代小説なのでちょっととっつきが悪くて、読むスピード感がちょっと他の本とは異なりますが、それでも慣れてくれば大丈夫。それよりも、この時の被害がとんでもないことがわかってきてびっくりしました。駿東郡の村々では、灰が四尺も五尺も降り積もったとか。一尺が30.3センチだということですから、五尺とといえば1.5メートル。江戸時代の人間の平均身長は男性が157センチ、女性が145センチと言われているそうなので、女性は完全に埋もれてしまう高さです。どんなに技術が進んだとしても、さすがに150センチの灰が積もったら、どうにもならないだろうと思います。ちょっと想像しただけで途方にくれる被害ですね。いつかは必ず来ると言われているのですから、予め予測して行動計画を立てておく必要性を感じました。現代社会では、火山灰は電気のショートやPCの故障などを招くので、また違った社会の混乱があるのではと心配になります。コワイコワイ。
また、小説内に出てくる「柳沢吉保」「新井白石」「荻生徂徠」などは日本史の教科書で知識としては習いましたが、歴史の学習的にはそこまで詳しく学習する時代でも人物でもなかった記憶があります。でも、こうして読んでみると、それぞれの性格があって、より親近感を持ちますね。荻生徂徠などはその最たるものかもしれません。
もう少し余裕を持って小説を読むことができればいいのですが、まだまだそんな余裕は生まれないようです。まさに貧乏暇なし(笑) ただ、小説を読みたくなる衝動に駆られているということは、きっと体が何かとバランスを取ろうとしているのでしょう。仕事しすぎだな(笑)
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