奨学金が返済できないで困るという話題があちこちで出ていますね。確かに返済が滞ったり、返済のために苦しい経済状況に陥ったりするケースもあるようで、なんともお気の毒としか言えない部分もあります。このために、政府や様々な関係機関が、給付型の奨学金を創設することを提言したり、またそれを働きかける運動をしている人たちも多いそうです。もちろん、そういうものが出来るのであればありがたいことなので、頑張って欲しいところです。
ですが、私の両親は昔から、「教育には金がかかるんだよ」と言っていました。
人が人を教えるんだから、一番金がかかると。
ふぅん、そういうもんかぁ…と私は思って育ってきました。だから、無駄金をずいぶん払わせた時は申し訳ない気持ちにはなりました。まぁ、結局払わせたんですが(笑) でも、あの無駄金があったからこそ今の私があるわけで、あの時両親が短気を起こしてお金を出さないと言い出したら、今頃私はどうなっていたことか… 本当にありがたい。
まぁ、ですから、教育にはお金は付き物です。逆に考えれば、やっぱり「安かろう悪かろう」の世界だと思います。タダでやってるものにそこまで求めちゃいかんだろう…と思うケースも多々あるのですが、いかにも高額を払っている上得意みたいな態度で公教育に接する人を見ると、何だか悲しくなるやら滑稽やら。いやいや、いくら税金でやってるからって、ほぼ無料ですからね。一線は引かないと…と思うこともあります。
あれ?閑話休題。
さて、奨学金の話。まぁ確かに奨学金で大学へ行く子も増えたと思います。私の教え子でも奨学金を取っている子はかなり増えました。そういう相談もかなり受けます。ですから、奨学金を取ることは珍しいことでも、ましてや気がひけるようなことでもなくなりました。ただ、返済がキツイという話も時々聞きますし、TVや新聞などでも話題にのぼります。今度の選挙の中でも話題として取り上げられることがありますね。
ただ、どれほどキツイのかと聞くと、「そりゃ確かにキツいわ!」というケースと、「そうか?」 というケースがあります。先日見聞きした話は、「返済額は月々16,000円/20年払い」というものでした。これが厳しいからチャラにして欲しいというもの。
え?
これって、年192,000円、総額約380万円って額ですよね?ちょっと高い新車1台分程度でしょうか。年に約20万円の返済。これって、どれほど厳しいんでしょうか? そりゃ、大学を卒業したにもかかわらずフリーターとか、ブラック企業勤めで手取り12万円一人暮らしとかですと厳しいでしょうけど、通常就職すれば初任の月給で19万とか20万とかは額面で来るわけですよね。初年度は少ないでしょうが、多少なりともまともな会社ならボーナスも出るでしょう。一人暮らしで家賃が高くて生活が厳しいという方もいるかも知れませんが、それでも16000円は出せるでしょう?と思ってしまいます。
私は音楽をやっていたので、学生の頃からローンで楽器を買うことに慣れていました。最初にヤマハのギターを買い、次にマーシャルというアンプを買って、その他もかなりありましたがみなローン払い。一番大きかったのは今でも使い続けている愛器。オリジナルESPというメーカーで作ってもらったギターです。オーダー当時で36万円しました。大人からすれば大した額ではないのかも知れませんが、大学生でこの金額のローンを組むのは勇気が要りました。でも、しっかりバイトもして、全額返しています。月額2万円ほどだったと思います。結局そのギターはその後あれこれと改造したりリペアしたりを繰り返しているので、総額で100万円くらいはかかっているかと思います。音楽をやっている人間は機材代金とスタジオ料金、バンドをやっていた頃はライブの移動や衣装、チケットノルマなど、とにかく金がかかります。だから大学もさることながら、しっかりアルバイトをしていました。
が、私の見た感じでしかないのですが、今の大学生は「働かねーなー」と思います。もちろん、バッチリ働く人間もいるんですが、総じて働かない。バイトしないって子も結構いるようで、そういう子が就職しようとしちゃうので、働く感覚が全然違うんですね。びっくりすることも結構あります。
ですが、年100万円、4年で400万円からの借金をしているわけですし、無税で稼げる上限は103万円ですから、学生時代にある程度しっかりバイトもして返済分を少しでも減らしたり、貯金でもしておけばそんなに「借金地獄」にはならないように思います。むしろ、学生のころから「働く能力」「お金を生み出せる力」をつけておかないで、ウカウカと遊び呆けていたり、「勉強」を印籠のようにして働かないことへのエクスキュースにしているケースも、いくつか目の当たりにしてきましたので、奨学金返済が「鬼」であるとは、私は一概には言えないように思っています。というか、これくらいの金額返せないのはどうかと思うよ?と感じるのは、ごく一般的な感覚でしょう。貯金すらできると思うんだけどなぁ。
まぁ、敢えて言えば、20年という返済期間が「鬼」でしょうね。ただ、それも期間を短くしたければボーナスや貯金で繰上げ返済をしておけばいいわけですからね。
給付型の奨学金については、私は「一部賛成、一部反対」です。
これは事業主になったことがない人は実感的に分からないことですが、他人から借りたお金では商売は上手くいきません。いや、借りたならまだしも、親が出してくれたお金とか、もらったお金で商売をやったり事業を起こしたりしても、絶対に成功はしないんです。借金を返さないといけない、自分の金を失えない、そういう意識がその人を仕事に「真剣に」させるのです。もらったお金なんて所詮あぶく銭。失くして元々なんです。だから、そんな真剣じゃない奴が事業で成功するほど世の中甘くないのです。私も実際どえらい失敗はしてますので、これだけは絶対の「真実」だと知っています。
ゆえに、奨学金は自分で負担せいと思います。借金背負ってるからこそ真剣になる。今はここが適当かついい加減な子が多いとも感じます。全員じゃないですよ?でも、それ背負ってその先の人生設計出来てる?と心配になる子が多いということです。無計画な借金は身を滅ぼします。ただ、若い子がいきなり400万からの借金を背負うのもどうかと思うので、半分くらいは給付、半分は返せと、そういうバランスは取るべきかな?と思っています。
なんでもタダでやればいいとか、欧米では無料のところがあるとか言っちゃう方もいるんでしょうが、社
会基盤が異なる国の例を持ち出して主張するのは安易過ぎます。何もかも税金で賄うというのも違う気がします。ある程度金銭面が厳しい世の中じゃないと、世の空気が弛緩する気がしています。そうじゃなくても、あの「ゆとり」で学生が相当弛緩したのは事実ですから。だから今引き締めにかかっているわけですからね。
大人になったら、その程度の借金が屁でもなく返せるのが当たり前だという自覚は、若いうちから持った方がいいと私は思っています。私も学生の頃を含め、数々の借金をしてきましたし、家のローンもたっぷり残っていますし、そもそも事業主なんて銀行さんからの借り入れがたくさんあるものです。
滞りなく返済するのもプライドです。
それが社会的信用となるのです。お金貸してもらえない人ってのも困りものです。ローン組めないですから。私は20代にいつの間にかカードの限度額が70万円になっていました。学生カードの上限が10万円程度なのに比べてすごい額になっていたのは、いくらカードで払っても、そしてローンも、すべてきっちり返済していたからです。
大学を出たら、どれだけ稼げるか、つまりどれだけ仕事ができるかが問われます。そして残酷なことに「給料」というわかりやすい評価基準で自分の価値を決められます。30代になれば、勝ち組負け組なんて言葉も飛び交います。がっちり働くことが出来る、そして稼ぐことが出来るようになるために、大学生活をキッチリ送ることが大事ですね。ただ大学と家を往復する生活は虚しいでしょう。覚えたことが酒とタバコと競馬じゃポンコツ学生でしょう。大いに学び、大いに遊び、大いに働いて、正に「リア充」の極致と言えるような生活を送っておけば、16000円の奨学金返済に地獄を見ることは無いように思うのですが、違うのかなぁ?
少なくとも、私のところの学生や生徒は、そういう常識で育てています。もちろんそうじゃ無いという価値観も尊重しますが、私は共感はできません。自分で給料稼いで生きていくというのが社会人の最低限の能力だと思うし、そこを否定してしまうとすべてが崩れます。文科省がゆとり教育で散々言っていた「生きる力」が正にこれでしょう。その生きる力は、全然養われてないじゃん!とツッコミたい気分です。
そう。
お金の無い情けなさ、惨めさは、本当に散々経験しましたからね。
「この人、お金の無い人達だから、なんとかしてあげて!」
って、面と向かって赤の他人に言われたこと、あります?(笑)無いでしょう?
私ありますから。
だからがむしゃらに働いてきましたし、今でもそれは続いてます。
奨学金なんてとっとと返してやるぜ!という人間になりましょう。
ちなみに、奨学金だらけでリハビリの道へ進み、今ではがっちり働いて両親に一軒家をプレゼントした子がいます。今でも親しい教え子です。私より先に家買いやがって(笑)でも、自慢の教え子ですし、私の考えをしっかり守ってくれている子です。そして3児の肝っ玉母ちゃん。さらに自分で事業を起こそうとしているすごいヤツです。
そういう力強い、雑草魂を持った、パワフルな子に育って欲しいというのが私の念願です。
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