ホントだー

中学受験の子。まだまだ復習が出来ていないとか、ノートが汚いだとか、計算の途中式を書かずに間違うとか、いろいろな問題があります。で、「大丈夫でしょうか?」というお声も頂きますが、把握しながら見ていますから大丈夫ですよ?とお話することが多くあります。むしろ、本当にダメだったらこっちから言いますので(笑)

まず親御さんに心得ておいてほしいのは、基本的に桜学舎の子は5年生から受験勉強しているので、世間の受験生が4年生でやることを5年の前半でやっています。だから、まだまだ幼い部分が残ります。少し早巻きでやっているので、最終的には帳尻が合いますが、最初の頃はだいぶ世間の進度や成長度合いとはズレが生じます。そういうカリキュラムで進んでいるということは是非ご理解下さい。

さて、そんな中。先日の算数の授業でのこと。
やっぱり途中式を書かないで宿題を間違えたり、ここは分かんなかったと白紙になっている子がいました。面倒なのか、お家で計算用紙に計算しているのかは分かりませんが、途中式を書いていないノートで常に来ます。答えだけが書いてあるノート。

もちろん授業の最初には言ってあります。こういうふうにノートを作るんだよ、途中式を書くんだよ、と教えてあります。でも、やらない子もいるんです。毎年のこと。
 
「気づいたならすぐ注意をして矯正すればいい」
というのは、思考力を奪うと思います。つまりそれって本人が全然納得していないし、意味も理解していないわけで、そこで「いいからこういうやり方でやれ!」とやらせると、ただ「型」を踏襲するだけの学習になります。こういう小さなところが私はとっても気になるんですね。

私は、「あ、書いてないなぁ」と思っても、すぐには注意しない方針です。ずっと授業で見ているわけですから、注意するタイミングを見計らいます。下手をすると同級生から「あの子、途中式書いてないよ」なんてチクりがはいることもありますが、「分かってるよ」「いいのいいの」と飲み込んでおきます。本人に言うタイミングを見計らうのです。
 
で、そのタイミングがやってきました。
他の子も宿題が白紙、という状態だったので、1問だけやり方を教えました。ボードで丁寧に途中式を書いて教えたところ、割とスッキリ頭に入ったようで、「分かったかも!」という声が出たのです。チャンス!

よし、残り、(2)から(6)まで解いてみな?
ただし、ちゃんとこうして途中式書けよ!
と。違和感なくその子も問題演習を途中式付きでやり始めました。
何と、白紙で持ってきた宿題箇所が、あっという間に全問正解!
「おっ!掴んだな!」と私。

「な? 途中式書いた方が正解率いいだろ?」

「ホントだー!!!」
それからはノートに途中式が書かれるようになりました。これがまた軒並み正解。本人も出来た出来たで大喜び(笑)

「おもしろーい! この算数なら、あと4限くらいやってもいいな!」
だって(笑) ゲンキンなやっちゃなーー!(笑) 


現場に出ていないと分からない指導の現実。
何かひとつ「エラー」があると、そのつど全部直してしまえばいい、というのは「理論的」には正しいのですが、やはりそこは相手が「人間」であり、さらには「子ども」なので、私がよく言う、

「そう上手くは行かない」

ということが多々出てきます。これが現場での経験を積み、現場感覚を持っている人間と、そうでない人間の大きな違い。現場感覚を持っている先生たちは皆「そう上手くは行かない」ってことを知っていますから、やっぱり注意をするにしても、何か方向転換させるにしても、そのタイミングを見計らうものです。まず自己流でやらせてみて出来ないことを実感させてから出来る方法を仕込むことだってあります。

授業の中で、
「ホントだーーー!」
「おもしろーーい!」
「へぇぇぇぇぇ!」
って出てきたら、その日の授業は成功。

授業時間50分。ただ生徒のお相手をする対価としてお金を頂いているだけじゃないんですよね。我々は。1年の中でどのタイミングでどうするか、しかも必ず狂う「計画」をフレキシブルに運用して、最終的には「間に合わせる」ということでしか、なかなかうちに通う子たちには対応ができません。でも、それをやっているから、

「まだ間に合いますか?」 
というお問い合わせにも対応が出来ているのです。

私もだいぶ授業出講数は減らしましたが、出ている算数と、時々見る個別の国語は楽しいですね。子どもの成長が見られるのは何よりです。私も、「あー楽しかった!」と授業から帰ってくることが増えました。

そして、授業を終えて帰ってくる生徒たちにも1Fで絡む変なオッサンですが、だんだん「バイバイ!」って帰る子が増えたり、手を振って帰る子なんかが出ると、ニコニコになります。 まだまだ変なオッサンも需要がありそうです(笑)

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