2つのタイプ

高校生を教えていると、学習の質が大きく2つに分かれることが分かります。

一つは、とにかく何でもいいから丸暗記と問題演習で乗り切ろうとするタイプ。もう一つは、一生懸命理解しようとするタイプです。

前者は「暗記は家でもできる」という、実に正論というべきことを述べて時間を有効に使おうとするのですが、解説をしっかり聞いて理解をしようとする努力が足りないことが多く、結局はテストをやらせると点数が低いことが多々あります。

確かに知識はあって、いろいろなことを知っています。ゴロ合わせや歌で覚えたり、豆知識もよく知っています。しかし、それが何なのか、どういう意味を持つのか、どういうルール付けや法則性があるのかということを考えたり、気付いたりする力に欠けることが多く見られます。「早く」「大量に」「競争して」覚えるということが「勉強」なんだと叩き込まれている感があります。そして、よく聞いてみると、例外なく大手塾で中学受験をしている子なのです。

理解しようとするタイプは、あまり要領のいい子には見えません。むしろ、ダラダラ勉強しているように見えたり、効率が悪いようにも見えます。しかし、「なぜこうなんだろう?」「どうしてこんなことがおきたのだろう」と、「思考型」の勉強をしていることが多いため、鋭い質問をしたりします。また、棒暗記ではないので、自然と関連事項などにも目が行きますから、一度に多くのことを学んでいたりします。

例えば、参考書やテキストの太字ばかりを覚えようとするのが前者、囲み記事のコラムまで読んでいるのが後者だというとイメージしやすいかも知れません。

中学受験・高校受験までなら丸暗記だけでも通用するでしょう。ある程度の知識量があれば、ソコソコの点数は取れるので、ソコソコの結果が出ます。

しかし、大学受験は丸暗記だけでは決して乗り切れません。論理的な思考力と幅広い知識教養が必要になってきます。実はそれが如実に結果として出てくるのが「英語」「現代文」「古文」といった文系科目です。

予備校へ通う生徒などの最大の弱点は、講義ばかりを聞き、理解した気になって、問題演習や暗記を怠り、結局は得点できない…というもの。

しかし、最近逆の弱点を抱える子もいるのだと分かりました。つまり、講義をじっくり聞けない、とにかく覚えれば何となる、理解しようとしない、だから思考力が問われる問題が得点できない、そういうタイプもいるのです。どちらがいい、悪いではありません。要はバランス。
 

最近、私がずっと教えてきた生徒と、最近入会してきた生徒を見る機会がありました。どちらも大学受験生。私が教えてきた子は、中学時代から授業でもテキストを読み、辞書を調べ、理解出来ないところの解説を聞き、そして覚えて来いと言われれば忠実に暗記してくるような子でした。それが私の指導方針であり、バランスを重視した学習です。

中には、「お金を払って自習させられている」などと批判する方もいらっしゃいました。そういう消費者感覚を持って学習に臨む方にとっては、指導時間中はずっと先生に教えてもらっていることで対価を払う価値があると思っているのでしょう。しかし、目的は学習が進むこと、勉強が出来るようになることですから、それはどうも考え違いではないかと私は思います。
 

最近入会してきた子は、まさに大手塾中学受験組。基礎からやろうとしても、「簡単だ」と言って解説も聞かずに全部やってしまおうとします。大量にこなすこと、イコール学習だと思っているふしがあります。


ところが、結局基礎的なことを問われたり、ここはどうなってるの?と聞かれると分からない、覚えていない。そして、根本や理屈を全然理解していない。それでも、呪文のように覚えているのです。記号として知識を覚えることに何の意味もないのですが、「それが学習だ」と幼い頃から叩き込まれているので、なかなか軌道修正がきかないのです。

私が教えてきた子は、2年生の段階でセンター試験の英語を解いてみて200点満点中130点以上をマークできていました。受験勉強を本格化させた来年、あと何点上乗せ出来るかと思うと、実に頼もしい限り。かつて私の教え子では、筆記200点、リスニング50点、250点満点中250点という点を叩き出した生徒や、筆記で180~190点台をマークした生徒が何人もいます。

暗記ももちろん必要ですが、暗記だけに頼らず、理解をしっかり出来る「学習力」を身につけた子が大成するのですし、最後の大学受験は棒暗記では決して乗り切れるものではないということを肝に銘じておく必要があります。

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