「船頭多くして船山に登る」
ということわざがあります。指図する人が多くて方針の統一がはかれず、物事がとんでもない方向にそれてしまうことのたとえですが、まさにそういう状態の高校があります。
都内の某私立高校。最近進学に熱を入れ、頑張っているのはいるのですが、どうも的外れなことが多い… やはり、「素人だなぁ」と思う面が多々あります(笑) そこへ通う桜学舎の生徒。生徒の方が大混乱。学校の先生はああ言うけど、放課後の特別講座に来る予備校講師は違うことを言う、そして桜学舎ではまたどうも違う。
「もう、どうしたらいいんですか!?」
とキレてました。まあ、普通なら面倒なので、それらの補習だけしておけばいいのかもしれませんが、桜学舎は申し訳ないですが、それじゃ納得出来ません。仮にもプロ、そして偏差値40台からの大学受験を17年も手掛けてきた私としては、まったくもって納得できないのです。これで悲惨な結果になったら泣くに泣けない…と思うので。そこでかなりじっくりとその子の相談に乗りました。私と、教室長と、教務主任と…
すると、かなりのボロが見えてきたのです。
まず、GW中の宿題。
予備校から来た先生は、「英文法ファイナル問題集/標準編」(桐原書店)をやれということになっているそうですが、これはどうなんでしょうか? ファイナルとあるので、GWでは??? 本人も全然わからないとのこと。ということで、これはスルーしましょうということになりました。もし提出なら、テキトーに流せと指導。
「これって、やったほうがいいんですか?」
という質問。この問題集は河合の瓜生先生のシリーズ。とても良い問題集だと思いますし、私も大好き。是非やって欲しいと思って、毎年生徒には勧めていますし、やらせています。難関大学編まで頑張れと言いたいところです。しかし、GW、しかもそこまでレベルの高くない学校の生徒が、基礎から積み上げている段階でやらせるべき問題集ではありません。せめて11月とか… どうもこう言いたくなります。「生徒の顔、見てますか?」と。
そして、またある学校に来ている予備校の先生は、
「本質が分からなくても、点数が取れればいいんです。受験に合格出来ればいいんでしょ?」
とおっしゃったそうです。
そうでしょうか? これこそが一般的に批判される「無意味な受験勉強」であって、こんなことを繰り返しているからこそ、「受験勝者」みたいな変な輩が生まれてしまうのです。日本で勉強している子が、世界に勝てないのはここ。試験に通りさえすればいい勉強など、本当にやるだけ虚しい、人生の時間の無駄遣いだと私は思います。
そもそも、本質を理解せずに、試験で点数を取ることなど本当に出来るのでしょうか? こう来たらこう答えろ…などというものを身に着けることがはたして正しいのでしょうか? 「ドラゴン何とか」の影響を受けたような人間が、予備校というところの教壇に立っているのでは、ちょっと心もとないものです。
もちろん、予備校の先生がすべてこういう方ではないことは私もよく存じ上げています。私も大好きな予備校の先生はいましたし、その先生の影響はいまだに多分にあります。予備校の先生の授業の見事さは本当に我々プロが見て感服するものですし、プロ中のプロなんかは惚れ惚れとします。以前、出口汪先生に論理エンジンの会合でお会いしたときは、お話を聞いて感銘すら受けました。
しかし、中にはこんなことを生徒に言ってしまう講師もまたいるのが実情。しかも学校内で…
そういう考えが「合理的だ」とお考えの方もいらっしゃるでしょうし、それをよしとする方がいることも否定しません。だから、どうぞお好きな方はやってみて下さい。
しかし、我が桜学舎はこの考え方には賛同しません。むしろ真逆です。やはり生徒には本質や物事の仕組みを理解してほしいし、本当の勉強をしてほしいのです。無意味なテクニックで大学受験という関門を乗り越えたところで、決して知的レベルは上がっていませんし、アカデミックになっているわけでもありません。つまり、大学の授業に興味など覚えないでしょうし、これから先、就職活動でボロが出るか、仕事上でボロが出るか、とにかくとんでもない場面で自分の至らなさに愕然とするのではないかと思います。
もう、受験生が、私たちが勧めた本を読んでくれたりしています。受験の授業を始めて2か月、古典や英語に興味を持って、意欲的に勉強してくれている子がいます。だって、本気で勉強したら、勉強は楽しいものですから。その本質が分かりたいと思うのが普通じゃありませんか?
その結果、素晴らしい大学合格の実績がもたらされる、それが受験勉強だと私たちは思っています。
もしかしたら、「甘い」のかもしれません。でも、甘かろうが何だろうが、どう客観的に分析しても、どう合理的に考えたとしても、桜学舎の方針こそが「正しい」としか思えないのです。
やはり、受験での実績稼ぎは予備校に丸投げ…という高校は、徐々に親御さんが見抜き始めています。そして敬遠し始めています。高校の先生も、少し目を覚ますべきじゃないのかな?と最近特に思うようになりました。
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