【書評】進撃の巨人

私は、大人になってから比較的漫画を読むようになりました。小中学生の頃に読まなかったわけではありません。鴨川つばめの「マカロニほうれん荘」が大好きでしたし、江口寿史の「すすめ!パイレーツ」も大好きでした。せっせと読んでいましたが、それは友達の家にあったり借りて来たりで、実は自分では持っていませんでした。マンガにそこまで固執していなかったと言えばそうとも言えます。もう少し骨のある「本」を大事にしていたようにも思います。

マンガを読むきっかけになったのは、小林よしのりの「ゴーマニズム宣言」の連載が始まったあたり。マンガでもこんなに骨のあるものがあるのだ…と思い、読み始めたのがきっかけで、意外に骨太の物語が漫画の中にも存在するということを知ったのです。

とりわけ衝撃が強かったのは、岩明均の「寄生獣」。なかなかエグい、グロテスクな画が展開される作品ではあるものの、自然界、特に食物連鎖に組み込まれる自然の中での「命」の大きさ、そして人間の身勝手な理屈、その滑稽さと矛盾が非常に批判的に描かれており、深く考えさせられてしまったのです。なかなかドギツイ描写がありますから、気を付けて読まねばならないとは思いますが、その「主題」の深さには感嘆させられます。

そこから、かわぐちかいじの「太陽の黙示録」も読み始めました。これはすごい。第1巻で富士山が爆発し、地殻変動が起き、日本列島が二つに割れるという設定。その後の政治的展開が大変興味深く、また主人公のカリスマ性がどこまで通用するのかが大変気になって、結局全巻読み進める結果に。

その他、大人買いで揃えた漫画は数知れず。「20世紀少年」も「21世紀少年」まで含めて全巻そろっていますし、「彼岸島」「デトロイトメタルシティ」「へうげもの」「働きマン」「ちはやふる」「限界集落温泉」「鉄子の旅」「Billy Bat」「惡の華」「テルマエロマエ」「ボンボン坂高校演劇部」などが本棚に並んでいます。「すすめ!パイレーツ」は昔買ったものを大切に保管していますし、「マカロニほうれん荘」は「マカロニ2」まで含めて買い直しました。実家に帰ると、「北斗の拳」「こち亀」「ジョジョの奇妙な冒険」「Drスランプ」「三つ目がとおる」などなどが揃っています。また、水木しげるの漫画が好きで、文庫やらなにやらで多数買っていますね。読書量は比較的多い私ですが、大人になって、徐々に漫画量も増えて行きました。昔のものが欲しくなったり、最近は大人でも興味深い漫画が増えたりしていることが原因でしょうか。

最近話題になっている「進撃の巨人」。既にアニメ化もされているようですが、アニメにはあまり興味もないのですが、でも読んでみたくて初めて電子書籍で買ってみました。iPadで漫画を読む… なかなか斬新な経験でしたが、さほど違和感なく読むことが出来ました。

そうですね、私の印象としては…
「鋼の錬金術師」と、「寄生獣」、「彼岸島」、そしてアニメ「エヴァンゲリオン」が全部混ざっている感じがしました。ストーリーや設定は確かに一つ一つ取れば独自のものがあるのでしょうが、この世界観はどこかで見たことがあるなぁ、と。

登場人物や画の雰囲気は「鋼の錬金術師」。残念ながら登場人物の名前がカタカナで来られると、それだけで感情移入の度合いが低くなります。そこは残念なところ。巨人がバクバク人間を食べてしまったり、人間を襲ってくる雰囲気はまさに「寄生獣」。巨人の何となく薄気味悪い雰囲気、そしてなぜ彼らが人間を襲うかには隠された謎があるという設定は、正に「彼岸島」です。近未来感や環境の設定は、「エヴァンゲリオン」が近いかなぁ。

漫画でも、ましてやアニメでも、前述のように最近では大人が読むに堪えうる作品が増えて来ました。いや、漫画・アニメで育った世代が大人になってきたとも言えるのでしょうか。いずれにせよ、大人でも面白いと思える作品が多くなってきています。「進撃の巨人」もきっと同様で、私が大学生の頃、深夜アニメで「スゴイのやってるよ」と言われて見た「エヴァンゲリオン」の衝撃に近いものを、もしかしたら現代の若者は感じているのかもしれません。

なぜ現れて来たのかが分からない「巨人」、ただ人間を「捕食」するだけ、しかも生きる糧にすることが目的ではなく、「食べる」という行為のみが目的であるという不可解さ。さて、これ自体にどういう謎が隠されているのか。残念ながら現在発売されている10巻の中ではまだ明らかにされていません。8月に11巻が出ますが、どうもストーリー展開がスローペースになってきた様相です。

ただ、漫画にせよ、アニメにせよ、そしてドラマにせよ、人気が出て、ストーリー拡張を始めると、結局収拾がつかないグダグダの展開になる可能性も秘めています。「LOST」というアメリカのドラマがありましたね。あれも結局散々ひっぱておいて何だか分かんなくなって終わってしまった… 「20世紀少年」も、何となく整合性がつかない決着だった気がします。しかも映画化されてまた混乱してしまった… そうだっけ?的な。

ややこの話もその傾向は否めない気がしてきました。アニメのストーリー展開もものすごく遅いそうですから。いろいろ読んできた私からすると、いろいろな作品の焼き直しである気がしてならないのですが、もう少し今後の展開に期待して見守ろうと思います。

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