塾であろうと、普通の会社であろうと、何か新しいことをやろうとする時期は、同時に、最も大事にしなければいけない「足元」が揺らぐ時期です。それを過去の経験から、私は強く自覚しています。新しいことばかりに目が行き、着実に、地道に基本業務をこなしてくれている大切なスタッフに目が行き届かないことが出てくるのです。それは私が最も避けたいこと。新しいことがあればあるほど、逆に今いてくれるスタッフのことを考えておかなければ…と自覚をしています。
ですから、何か、今のスタッフにしてあげられること、そして刺激になって、かつ本人のためにも、塾のためにもなるスキルアップの機会はないだろうかと考えていたところ、大変良い機会を頂き、昨日日曜日、講師研修会を開催することが出来ました。講師は千葉の時代から懇意にして頂いているKAコーポレーションの長岡先生。ありがとうございます。
日本の教育は、残念ながら「机上の論理」を学ぶこと、つまり今日のお話にあった「インプット」ばかりに偏っているような気がします。例えば、確かに経営学を学ぶ、理論を学ぶことは大切な基礎です。しかし、教えている先生は会社を経営したことが全くない…という不思議な事態も生まれています。つまり、理論だけでは通用しない、実地の経験や真実というものもバランスよく学ぶ必要があるのだと思います。
私などは、学生のノリで面白がっているうちにいつの間にか会社を預けられて塾をやることになってしまったようなもの。経営者を目指して勉強していたわけでもなく、着実な努力を重ねていたわけでもありません。それがなし崩し的に経営者になってしまって、もうサラリーマンには戻れないなぁという人になってしまったわけです。誰も教えてくれず、誰も責任を取ってくれず、誰のせいにも出来ない中で、本当にもがき苦しんだ時期もありますし、本当にお金が無くて惨めな思いもしてきました。しかし、「仕事とは何ぞや?」「なぜ仕事をするのか?」「この仕事の意義は何だ?」ということに何度となく向き合ってきました。
これから職業を決めていく若い講師の皆さんに、変に勘違いした人間にはなって欲しくないのです。もちろん、「なるわけがない」人たちですが、改めて、働くことは面白くて、仕事って人を幸せにして、自分が夢中になれるもの、そして役立っている、必要とされていると実感するもの、そんなふうにとらえてほしいと思っています。
私はこの「塾の仕事」はライフワークになりました。
セミナーにも出てきましたが、塾の仕事は本当に不思議です。お金をもらって、「ありがとうございます」「よろしくお願いします」と言ってもらえるのですから。普通はお金をもらったら「ありがとうございます」と言う側です。ゆえに、もらったお月謝以上のことをしなくてはいけないのでしょうね。それでまた感謝される… 実に不思議です。
でも、焼肉屋さんだって、お客さんが「オイシイ!」って笑顔で言ってくれたら、単純に嬉しいです。塾だってそうですよね。
塾をやっていて一番切ないのは、大学4年生になって一番「仕事」にシビアになり、きちんとやっていける「大人」に成長したところで、就職が決まり素晴らしい人材を手放さなければならないことになる、という点です。これが一番辛い。そしてずーっとずーっと思い続けてきたのは、そこで就職先の一つとして考えてもらえるような会社にならなければいけないのだろう…という点。でもそうすると組織が大きくなり、会社も拡大して経営基盤を強固にして、展開も広げねばなりません。それが桜学舎の理念に、私の理念に合っているのかと言われると自信が無いのです。大いなる矛盾なのですが。
でも、一つ、二つと、一歩一歩足を前に出していけば、必ず大きな前進につながると思っています。もっとも、成長スピードは遅いかもしれません。しかし、転職の際に検討してもらえる会社、自分のやりたいことをしっかりやれる会社になれるよう、私たちも頑張っていこうと思っています。我が桜学舎の講師も、塾の仕事を通して、仕事をする喜び、楽しさに、厳しさを加えながら振り返って頂ける機会となったら、今回の研修は成功です。
大学の就職率を上げるための就活や、内定取り合戦などは全くもって無意味。桜学舎の受験生にも言っていますが、学校や塾のために受験などする必要はありません。同じく、大学のために内定を取る必要などありません。働き方は、就職する以外だって、起業するもよし、フリーランスで働くもよし、何かを目指して修行するもよし、海外に行ってしまうもよしです。良く考えてみれば、内定率など、馬鹿馬鹿しい数字です。
もちろん、自分で食って行くというのは大変なことです。しかし、賢い大学生ですから、ちゃんと考えて行けば食いっぱぐれることはないでしょう。だからこそ、働く意義をしっかり考えてほしいのです。そして、桜学舎で働くことが、少しでもそれに寄与出来たら、望外の喜びです。
また明日から。講師が元気に、頑張って、意欲的に働いてくれることを期待しています。
遠路ご参加下さった牛谷先生・峯村先生・西崎先生・岩崎先生、それに状元塾講師の皆様、NAC進学館講師の皆様、ありがとうございました。また今後ともよろしくお願い致します。
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