最近、私立の中高の教育内容についての話題がよく出ます。
私と、保護者の間でです。
以前受験されたお母様方と時々お会いするのですが、その際、「どうですか? 元気ですか?」と聞くと、「先生、私立って大変ですね」という声が聞かれます。勉強は厳しくて、学校行事も一杯あって、その他に部活等も厳しく、点数が足りないと補習があったり、季節講習があったり、それで足りないとさらに補習… 面倒見はいいけれど、タイトにいろんなものが詰め込まれすぎているという感じがあるようで、「ちょっと子どもが可哀想」と感じる保護者もいるようです。
勉強の部分をきちんとやってくれるのはいいのですが、量的な攻勢をかけてくるというのは、やはり最近気になる「予備校頼り」の私立学校の特徴です。所謂「特進クラス」というのは、学校でありながら中身は完全に進学塾・予備校です。実際皆さんがよくご存知の大手塾・大手予備校が学校内にカリキュラムやノウハウを提供しており、大学の合格実績を上げるために学校の先生方が予備校講師にならって授業研究を行ったりしていますし、サテライト映像授業を導入している学校もあります。
もちろん、偏差値中~下位の学校が他校と遜色無い合格実績を残そうとすれば、多少厳しい指導も必要になって来るでしょう。しかし、残念ながら、どれだけ「受かるための勉強」を繰り返したところで、レベル的には、上位校へ合格出来る子とは全然「格」が違います。コレは一体なんなのだろうかなぁ?と長いこと思っていましたが、最近それを「知的なものの総量」の差・違いだと言うようにしています。
桜学舎の講師には、「東大に行ってみようかなと思ったんですけど、厳しそうだったんで…」と、早稲田へ行った先生、最初は一橋を目指してたけど、早稲田になったという先生など、そんな講師が何人もいます。そんな彼らの共通点は、まぁよくものを知っている…というところです。
大学に受かるために、英数国理社の勉強は一生懸命しているけれど、評価の対象にならない美術や音楽、家庭科や体育などは疎かどころか見向きもしない…というような生徒は、残念ながら入試でも「苦戦」します。たまたま合格点を超えたとしても、入学後つまらない毎日を過ごしていますし、普通に就職程度はするんでしょうが、何かに秀でているわけでもない… あまり使い物にならないという話をよく聞きます。
それよりなにより、振り返ってみたら、大学受験の勉強に捧げた6年間…なんて、虚しい青春時代ではないですかね? それをつい生徒に押し付けてしまう。大学受験、大学受験と煽れば煽るほど、かえって無機質なつまらない勉強だけが「勉強」としてとらえられてくる… これが悪循環を招いているということに早く気付いてほしいですね。基本的に、偏差値の低い学校の生徒は、勉強が好きじゃないのです。つまらないと思っているのです。やりたくないんですね。そこを、面白がらせ、知的好奇心を育て、もっと知りたいと思わせることが「何より」大事なのであって、そういう子が難なく上位大学に合格していく子であり、いかに計算されつくした学習システムと進路指導があったとしても、本人の好奇心に勝る合格の原資は無いのです。
どうも、そういう、本来教育者が考えるべきことを、受験屋が振り回してしまっているように感じます。いくら進学校だとか特進クラスだとは言っても、親も、塾も、世間も、学校の予備校化を望んでいるわけではありません。なぜなら、予備校へ行きたければ行くんです。そうじゃないのです。学校には「学校」を求めているのであって、「教育」を求めているのです。
このブログを読んでくださっている学校の先生もいらっしゃいます。ありがとうございます。「ブログ読んでます」と言われることが多くあります。ただ、私はあえてこの苦言を言いたいのです。学校は学校らしくあってほしいと。
何度もいろんなところで言いますが、子どもは植物を育てるように、また計算式で解くように科学的に成長したりはしません。逆に、意外な大爆発を起こすこともあります。それは「教育」の力です。残念ながら、予備校の「学習システム」では、子どもは育てられません。上位校の授業ほど知的好奇心を掻き立てるものであり、面白くて楽しい勉強であり、大学受験直結ではないものです。
レベルの高い人間ほど、美術も、音楽も、旅行も、食べ物も、とにかくいろんなことを知っていますし、知りたいと思っています。どんなことでも上手になりたいと考えていて、上達することへの「学習」を欠かしません。友達が多くて刺激を受け、様々な活動を通して友人が多く、毎日が楽しくて充実していて、恋も人並みにしています。そういう子を育てるのが本当の意味での教育であって、結局のところ一番手がかからない実績の上げ方であるように思います。勉強自体を一生懸命教えるのではなく、やり方を教えたり、知的な刺激を与えたりすることが重要なのだと思いますよ。
出来る子は、幼い頃に、一見「無駄」に思えるようなことに興味を示します。ヒーローものの怪獣を覚えたり、電車の駅名を覚えたり、車の車種を覚えたり… それって、知的興味。折り紙をやらなかったり、プラモデルをやらなかった子が空間図形の問題に四苦八苦したりしているのを見ると、やはり何でも興味を持ってやってみることの重要性を強く感じます。
私よりもはるかに本を読んでいる講師もいます。私と対等に話せる講師もいますし、何でもよく知ってるスタッフが多いですね。もちろん私の方が知っていることも多いですが、それを「初めて知った!」「へぇ、勉強になります!」というふうに次から次へと吸収していく力も持っていますね。
そういう子。
是非、そういう子を育てましょう。
子どもはテクニックや物量作戦で、何とかぎりぎりで大学へ押し込んでも、ロクな大人になりません。自分から勉強する子、面白いことに熱中できる子、知的好奇心の総量の多い子を育てましょう!
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