プロとしてのあり方

先日タクシーに乗った際、以前、妻にものすごく愚痴られたことを思い出しました(笑)
上野からあまりに大きな荷物を持ってしまった彼女は、自宅までタクシーに乗ったそうです。1~2メーターで来る距離ですから、「仕方ないか」と思って乗ったところ、その運転手さんは仕事を始めて間もないドライバーさん。ちなみに有名なタクシー会社の社員です(個人タクシーではありません)

車には立派なナビが付いているし、この近辺のタクシーであって、遠方から来たタクシーを捕まえたわけでもありません。

始めて間もないので、道を教えてください… と正直に申し出るところまではいいでしょう。下手に知っている振りをされるよりは全然マシです。

ところが行き先を指定しても、立派なナビを使おうともしません。地図も確認しませんし、ただ教えてくださいと車を走らせ始めたのだとか。そのうち、

「ここの角は曲がらなくていいですか?」
「どこを左折するのですか?」
「この車の後ろにいても大丈夫ですか?」
しまいには、
「この車線にいてもいいのでしょうか?」
と聞き始めたのだとか。
流石にカチンときたのか、情けなくなったのか、泣きたい気分になって、「もう降ります」と途中で降り、大きな荷物を持って歩き始めたのだそうです。折しも雨が降ってきたところ。でも、あまりに酷い、プロとは言えない、仕事の意識を持っていない人と同じ空間にいることに耐えられなくなったようで、降ろしてくれと発作的に言ってしまったそうです。

ちなみに、いつもならせいぜい2メーターで来るところを、降りたのは自宅から2ブロックも手前であるのもかかわらず4メーターまで上がっていたのも、「この人はメーターを上げるためにわざとやってるのか?」という疑念も持ってしまったのだとか。

その晩、まぁまぁとなだめながらも、共感しつつ、その話を聞きました。
「そりゃ悪いけど、その運転手さんは乗せたのがあなただったから命拾いしたね。俺だったら大変なことになっていただろうね」と笑いましたが、私がもしこんな運転手さんにあたったら、ちょっと尋常じゃないでしょうね。本当に滅多に人に文句を言うことはありませんし、クレームを入れるなんてことはあまりありませんが、流石にこればっかりは…

一番私が「おかしい」と突っ込みたくなるのは、どんな職種であっても「プロとしてのあり方」がおかしい人、自分の仕事の本質を理解せずに働いている人に出会った時です。例えば、この運転手さんであれば、お客さんになるべく負担をかけずに、目的地まで心地よく連れて行くこと、これが「仕事の本質」でしょう。もちろん完璧な人間などいませんから、そりゃ道を知らないこともあるでしょうし、目的地を知らないこともあるでしょう。だったら目の前についている立派なナビは何なんだ?と言いたくなるわけです。どの車線にいたらいいかくらい、自分で判断してくれと思うわけです。だめですかね?

その仕事の本質を理解していないとこういうことになるんだと思います。
我々の業界でも同じことが言えます。時々、学生講師はいますか?という質問がありますが、桜学舎は正直に「沢山いますよ」と答えます。それで難色を示して入会しない方もいますが、それはそれで結構なんです。 お考えが違うだけなので。

ただ、「学生である」という点のみを基準にする方が時々いるのでこちらも苦笑いするしかないのですが、講師の仕事の本質は、第一に「生徒の成績を上げることができるか」でしょう。もちろんそうなんです。でもそれだけではハッキリ言ってダメなんですね。第二に、「生徒に好かれるか」「生徒に抵抗感を持たせないか」という問題があります。ここでぶつかる講師も中にはいるので、生徒との相性はとても重要な問題です。大人から見ればいい人なのに、なぜか子どもに好かれない講師もいます。仕事の本質から考えると、ここも重要。さらに言えば、モチベーションを上げることができるかとか、生徒とフレンドリーに話せるかとか、子どもを導く度量があるかとか、いろいろな要素が講師職には必要です。

ですから、学生か社会人かという点だけにこだわったり、学歴が高いかどうかだけにこだわったり、成績を上げられるかどうかだけにこだわるのは、「生徒を導く」という点に講師の仕事の本質があるとすれば、どうもおかしな感じがするのです。

その仕事の本質はなんだろうか? そう考えて、プロなら仕事をしてほしいですし、桜学舎の講師が学生でありながらそのくらいのことは考えながらやっているのですから、せめて本職のドライバーさんなら、もう少しお客さんのことを考えて職務につくべきだったのではないかなぁと思うのです。

塾の講師が、「始めたばかりなので教えてください」とも言えません(笑)
この問題をやってもいいですか?なんて聞くことはナンセンスですよね。
そういえば、以前、他の塾で1冊テキストをやり終えた時、「次のテキストはAとBと、どちらがいいですか?」と聞かれて困惑し、うちへ来られた方がいましたが、「それを指導してほしいのにね…」と笑ってしまいました。これじゃプロじゃないわけです。

街の仕事からプロが消えたと言われて久しいです。でも、プロが消えたわけではないのです。
以前、ある旅館の仲居さんが言っていました。
「1円でももらったらプロ、私はそう思ってるの」
ボランティアなら上手くいかなくても仕方ないのかもしれませんが、プロで、お金をいただく限りは、最低限の努力と誠意をもって仕事に当たらねばならないと思います。街からプロは消えていなくて、アルバイトだろうと、パートだろうと、正社員だろうと、仕事に従事している間は「プロ」なんですよね。お金を頂いている以上。

変なプロ意識は要りませんけど、学生だろうと本職であろうと、私はきちんとした仕事をしたいし、ある程度「流石だね」と言われたい、つまり仕事を上手にこなしたいし、成果を出したいと思っています。
学生講師達にも、「1円でももらったプロ」という言葉は伝えています。

「アルバイトだから仕事のクオリティが低くても仕方ない」
「やり始めて間もないから、下手くそでも仕方がない」
などと物分かりのいい人はいないわけです。
ましてや正規料金をもらっているわけですから。
アルバイトなので料金半額、始めたばかりなので料金半額…なら納得する方もいるんでしょうけどね。

私たちももちろん精進したいと思います。 

関連記事

  1. 教え子から

  2. 子どもの負担

  3. AクラスBクラス

  4. 研究者にリスペクトを

  5. 夏期講習が始まったら

  6. 謝るのはイヤ

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

塾長ブログ

2015年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031