勉強をテクニックだと思ってると失敗します

「勉強のやり方が分からないようです」
「勉強のコツを教えて欲しい」
 
こんな感じで塾にいらっしゃる方は多いものです。確かに勉強のキッカケを作ることは大切です。しかし、実はこれ、結構な落とし穴なんです。どういうことか? まず前提として、勉強を「テクニック」だと思っている時点で、勉強が出来るようになる要素がないんですね。ここはかなり重要な部分です。

大人がそう思ってしまっている場合はもっと重症で、テクニックさえ習得できれば、コツさえつかめば我が子はできるようになる、という考え方は、
1)本当は能力が高いはずだが、コツがつかめていないために実力が出せないだけ
2)コツさえつかめば簡単に出来る
と誤解しているケースが殆どです。これ、最近ですとお父さんお母さんという若い世代ではなく、「お爺さん・お婆さん」という一世代上の方がお子さんの受験や学習などの「仕切り」をしているとよく出てくるケース。そういう時代じゃないんですけどね、やっぱりご自分の頃のような「受験戦争」を前提としてお話が始まっちゃうんですよね。今はそんな上っ面の勉強じゃ無意味だって時代なんですが… 受験勝者が社会の勝者になれない時代です。本質を理解せずに形だけ東大出てきても無職になる時代ですから。コツやテクニックさえ… いやいや、違うんですよね(笑)

27年教壇に立ってきて、結論はたったの一つ。
「積み重ねに勝るものは無い」
これしかありません。

時々、
「もうやり方はわかったから大丈夫」
などと言って一部の受講を止める子もいますが、その子にテストをやらせてみると受講していた頃より悪化しているのが普通です。継続が重要なわけで、むしろ自分ではコントロールしたりやりにくかったりする科目こそ塾で受講を続ける必要があるんですが、そのあたりは勉強というものがあまりよくわかってないんじゃないかなぁと思います。酔っ払いは常に「酔っ払っていない」と主張し、大丈夫じゃない人間は常に「大丈夫です」と言うものです。

勉強の基礎も土台も何もできていない子に限って、「コツを教えて欲しい」と言い出します。そういうものです(笑)答えは、「無理」です。あなたにコツもテクニックも、教えたところで豚に真珠。使えません。なぜなら、まず「机に向かう」「勉強時間を確保する」「努力する」「自分で考える」という、小学生レベルのことが出来ていないからです。学校の授業を全く聞いてもおらず、テストをやれば20点だの30点だのという点数を取るような人が、「コツ」なんて言葉を言い出すこと自体が「分かってない」のです。

そんな風に突っ込むと、ご機嫌を悪くする子もいますが、真実を正確に伝達するしかありませんので、噛んで含めてこの話をします。たいていの場合わかってくれるのですが、結構「余計なプライド」がある子はダメですね。この部分でのプライドは要らないのですが…

「コツがわかってないようで」
という保護者の皆さんも、違いますよ。まず、あなたのお子さんは「努力の積み重ね」が出来ていないのです。だから、スタートラインはそこです。毎回授業にきちんと出席する、きちんと内容を理解するように授業を聞く、自分できちんと考えて問題を解く、宿題を忘れない、小テストの勉強をしてくる、そしてこれらに「漏れ」を作らない、サボらない、毎日勉強する、そういうことじゃないですかね?

そもそも、1年も2年も3年もかけて悪化していった成績が、どうして塾に数回来るだけで「完治」すると思うのでしょう? 病気ならば「赤点」などは「瀕死の状態」ですから、即入院です。場合によっては即手術でしょう? それを日常生活も十分楽しみながら、数回の通院と投薬で完治すると思う方がおかしいのではないでしょうか?(笑)

勉強も同じ。数回で劇的に改善するなんて、まやかしに過ぎません。もちろんそういうケースもありますが、そりゃ土台がある程度できている子です。つまり、「風邪」程度なら数回の通院と投薬で回復します。基本的に成績が悪化してから来た子は、悪くなっていった時間と同じだけ完治に時間がかかります。3年かけて成績がどん底になった子ならば、3年かけてリハビリというのが普通です。もちろん、「劇薬」を与えて応急処置をせねばならない場面もあります。「痛み止め」を打って舞台に上がる役者や試合に出るスポーツ選手などと同じです。が、その副作用もまた大きなものです。

その「劇薬」にあたるのが「テクニック」です。
テクニックで試験を乗り越えれば、確かに点数はクリアできるかもしれません。しかし、その副作用は、

1)勉強の中身が理解できているわけではないので、その先同じ過ちを繰り返し、劇薬を投与し続けることになる。つまり、塾に行き続けたりテクニックを与え続けないと何もできない人間になる
2)実力は無いので、常に人より遅れ、本当の実力が必要になった場面では、絶望的に追いつかない。

という、考えてみると底知れぬ恐怖に襲われるようなものです。ちょっとしたコツを手に入れ、受験テクニックで上手に選択肢を選び、内容もよくわからないけど解答を出せるようになったところで、その場しのぎにしかなりませんし、それを繰り返していくと、子どもは「これが勉強だ」と勘違いするようになります。

「いいから、答えを教えて」
「早く答えを出せる方法を教えて」
「アじゃなかったら、じゃぁイ?」
こういう子は絶対に成績が伸びません。「楽チンに成績を伸ばす方法」など、「錬金術」に近い眉唾ものです。

私が、とある大手塾で勉強させていただいた際に、教室に「努力の天才になろう」と書いてありました。大手塾は私の対極にあると思ってばかりいましたが、この言葉には大いなるシンパシーを感じました。素晴らしい塾だなぁと。そして、本音で、真実を生徒に教えているなぁと感心しました。

成績向上テクニックなんてないんです。そして、勉強のコツなんてものも無いんです。「小さなことからコツコツと」というのは昔の某大阪の議員さんの言葉でしたが、まさにそう。目の前のことが出来ない人間が何を偉そうなこと言ってんの?と言われます。当たり前。

きちんと、コツコツと、努力を積み重ねることが何よりも大事です。それを地道にきちんとやり続ける、途中でサボらない、これが一番の力になるはずです。 

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