自分で勉強する時間

塾に成績の相談をすると、結局授業数を増やすという営業をされることになる。
こんな話をよく聞きます。

塾も商売ですから、数学が苦手で、いまいち成績が伸びないとなれば、もう1コマ数学を増やしましょうというのが手っ取り早い話ですし、親御さんも一応納得する話にはなります。しかし、結局のところそれほどの効果は無いというのが実情。そりゃやらないよりやったほうがいいに決まってますが、所詮その程度の話。急場しのぎのテスト対策や検定対策などでは致し方ない面もありますが、結局授業数を減らせば元通り。ドーピング効果しか得られないのが「コマ数増」という解決策です。根本解決には程遠いとしか言いようがありません。

じゃあ結局どうすればいいのか。
もちろん即効性がある話ではないという前提ですが…

そもそも、「自分で勉強する時間」を確保しなければ成績は伸びないものです。つまり、得た情報を自分の「モノ」にする時間がきちんとなければダメだということなんです。私の父は高校教諭でしたが、やはり同じことを子どもの頃言われました。授業ばかり受けてちゃダメだと。自分で勉強する時間を確保しろと。これは本当にその通りです。

「授業」とは、知らないことを教えてもらったり、自分がやったことをチェックしてもらったり、診断してもらったりアドバイスをもらう時間なんですね。ですから、医者で言えば「診察」の時間です。診察回数を増やしても、病気は良くなりませんよね? チェックの回数が増えるだけのこと。塾でも学校でも、授業を増やすだけでは、教えてもらう時間が増えるだけ。結局診察回数が増えるのとさして変わりません。

出された薬を飲むこと。言われた通りの養生をすることで、病気は治癒していくものです。出された薬を「宿題」、言われた通りの養生は「自分で勉強する時間」と置き換えると、全て当てはまって納得していただけるような気がします。

授業を増やす以外の解決策を持っていないのは、実は学校も変わらないのではないかと思っています。特進クラスや何とか大学コースみたいな編成をしている高校も、結局は授業数を増やして0時限目や7時限目という時間を作って、生徒の学習時間を徹底的に増やしているケースがほとんど。そりゃ伸ばせますけど、生徒もヘトヘトになっているし、知識教養を育む時間も減っています。つい最近、特進クラスの優秀なある私立高校生の知識量があまりに少ないことに愕然として、呆れてしまったことがありました。一体何を教わっているの?って。古文の時間でしたが、文法や入試問題の解き方はよく習っているようですが、古文の面白さや内容への興味、古文世界へ想いを馳せること、そして何より古文をきっかけに奈良や京都に行って見たいと思うことなどなど、そんなアカデミックな好奇心を全く育めていないことにびっくりしました。それが果たして優秀な教育と言えるのだろうかという疑問。

授業とは、学習への興味へつながるひとつのきっかけに過ぎないと思っています。優秀な講師が見事に問題を解いてくれたからって、その子の頭が良くなるわけじゃないのです。でも、そこで小さな感動が生まれて、自分も解けるようになりたいと思ってくれたら、それはそれで意義のあること。

「自分もやってみたい」
となって、自分でやり始める。これこそまさに本当の「アクティブラーニング」であるような気がしています。

塾としては、とても面倒なことを言っています。
塾の評判を上げたいなら、手っ取り早く合格実績を出して、生徒をいっぱい集めたいなら、こんな面倒なことを言わないで、とっととドーピングして、ガンガン成績上げればいいんでしょう。あそこに行けば成績を上げてくれると評判になって生徒もガンガン集まるでしょう。

でも、それじゃダメなんです。見せかけの学力をつけるだけでは、あとあと根無し草で痛い目を見るのは子ども自身なんです。私自身、それに近い経験をして来ているので、その情けなさと悔しさ、辛さはよくわかっているつもりです。とんでもない落とし穴に落ちたり、圧倒的な実力差の前に完敗を喫する場面をいくつも見ることになります。ダメな勉強法はどうあってもダメなんですね。正攻法で、本当の実力をつけることしか正しい勉強法は無いと私は確信しています。よく分かってないけれど点は取れるみたいな勉強法はダメに決まってます。

そういう意味で、「教えない教育」を標榜する学校もありますが、意外に正しい選択なのかもしれないと思っています。つまり、自分で考えて、自分で勉強する大切さを教え、それを促し、常識化してきっちりやらせる。その学校は大きく飛躍して東大生を出すにまで至りましたものね。
 
だから、桜学舎も私たちが考える「最低限」の授業数しか設定していません。それで十分じゃ無いですか?というくらいしか取らせないのです。それ以上やりたければ、自分で勉強しなさいと。教材ややり方、やる場所は提供してあげるからと、そういうスタンスでいます。

自分で勉強する時間を確保できれば、見違えるほど成績は上がります。
裏返せば、自分でできないうちは上がりません。
自分で勉強する子を育てることに注力し始めている桜学舎。長期計画ですが、いろいろなことを考えようと思います。 

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