高学歴社会になって来た昨今、勉強など家庭で教えられるという父母も多いことと思います。正直なことを言うと、高校の勉強はともかく、小中の勉強など、お父さん・お母さんでも教えられるし、ご自身で解くことなど簡単にできるかと思います。もちろん「忘れてしまっている」というところはあるかもしれませんが、そりゃ錆びついただけ。磨けばすぐに元どおりになります。そんなものです。
しかし、いちばんのネックは、お子さんたちが思春期だということです。簡単にいうと、「親の言うことを聞かない時期」なのです。親離れをする時期でもありますから、親以外の大人の言うことは結構素直に聞いたりするのに、親が同じことを言っても聞かなかったりします。そういう時期なんですね。だから第三者の指導者が必要になって来るわけで、そのために「塾」へ行かせるという現象が起こるわけです。
そこを、自制できる子も中にはいます。うまいこと反抗期がズレる子もいます。ですので全部に当てはまるようなことではありません。そういう子は実は自宅で通信添削をやっても、今流行りのスマホで動画授業を見ても、そりゃ成績も上がりますし、勉強も出来るようになります。その子はどこへ行っても大丈夫です。
しかし、やっぱり何となく力が出せない、何となく本気になれない、どうしたらいいかわからない、そんな子が大半であるような気がしています。ガイド役が必要な時期なのかもしれませんね。
ただ、私は長年子供達を見ていて、その子が持つ「知的好奇心のレベル」と、努力の有無によって表出して来る「学力」は別物だと思っています。本質的に知的なものに興味があって頭のいい子でも、努力をしないと学校の成績は悪く出ます。そのギャップがあると、不幸が起きるのだと感じています。
たとえば、ものすごい努力家なのだけれど、実はあまり知的好奇心が高くない子というのがいます。真面目に努力だけはするし、成績はそれなりに取るのだけれど、中身が無い子。実は勉強の中身に興味が全く持てずに、ただ良い成績を取ることが目標になっている子がいます。こういう子が成績の通りのレベルの学校に行くと、実は知的好奇心の強い子たちに囲まれて埋没してしまうというケースがあります。結構見て来たケースですが、とにかく何にも興味がないんですね。ただ上のクラスへ上がるとか、いい大学へいくとか、そういうことしか興味がないんです。これは最終的には成功しません。結局、その勉強が何に役立つのかもよく分かってませんし、そもそも「何がやりたいの?」と聞かれる段になると、完全に「さて?」と途方にくれます。意外に「特進クラス」なんかでビシビシ叩かれて来た子に多いタイプです。
反対に、頭はいいし、知的好奇心いっぱいなんだけれども、楽しいことがありすぎたり、趣味に熱中しすぎるあまりに成績を落としてしまうタイプ。実は、自分で言うのも何ですが私はこちらのタイプでした。先生からも「いい子だ」「頭がいい」と言われていたにもかかわらず、成績はパッとしないんです(笑)理由はまさにコレ。つまり地道な努力をしなかったんですね。だから、受験においては連戦連敗に近いような大失敗を数々してきました(笑)まぁ、慌てて努力して何とか格好をつけた形なので、高校も大学も楽しく過ごせて来ましたし、何とかなった、何とかしたのですが、やっぱり「地道な努力」を続けている友人たちには敵わないというのが正直なところ。どこへ行っても優秀なのは友人たちばかりで、私はなかなか突出することなどできませんでした。
ちなみに、大人になってからは反省したので、今は何とか人並みに生きていられますが、30歳の頃に半年給料0円ってことがあって、もう死ぬかと思いました。お恥ずかしい。
好きなことに熱中するのは結構なことです。私はそこには理解があります。
ただ、だからと言って、勉強を疎かにしたりほったらかしたりすると、後で痛い目を見るのも、身を以て体験しています。ゆえに、自分の知的レベルと表出する学力を限りなく近いものにしておく大切さを生徒には常に諭しています。自分の周りが自分とは合わない人間ばかりの環境で暮らすのは、最大の不幸だと言えると思います。私みたいにギリギリで何とか出来ればいいのですが、どうもそれもままならない子が多かったり、また私の頃のように試験さえ何とかすれば大丈夫って時代でもありません。
この春の時期、授業で泣いてしまう子も時々います。自分だけ出来なかったり、宿題をやっていなくて残されたり、取り組み方が甘くて厳しく指摘されたりする子です。毎年のことですから私たちも驚きもしませんが、やっぱりいるんですね、こういう子。
でも、この時期にきっちり仕込んでおかないといけないことなんです。ダメなものはダメ、スルーしちゃいけないものはいけない、そして出来るようになるために真剣に取り組まなきゃダメ、そういうことをしっかり仕込んでおかないと、1年ダメなまんま行ってしまいます。特に小さい子なら小さい子ほど、一度きちっとやっておけば、あとはあまり崩れないでやっていけます。
今年も何人か泣きべそをかいています。
もしかしたら、今までこれで何とかなっていたのかも。甘く見てもらえたのかもしれませんね。もしくは全部先生がやってくれたのかも。それではダメなんですよ。成長しない。なきべそかかせても、ちゃんとルールを守らせて、自分を変えることが出来るように、また地道に努力できるようにしなければ、おそらく本当の「成功」は見えてこない気がします。
大声で叱ることもなければ、恫喝することもありません。
「応援してあげるから、最後まで頑張れ」
「勉強出来ないからって怒りゃしないから、落ち着いてやれ」
それだけです。
気持ちを落ち着かせて、じっくり考えて、頭を悩ませて、ウンウン唸って何とか自分の答えをひねり出す。覚えるんじゃなくて、考える。地道ですけど、そういう時間をちゃんと丁寧に取ることが大事だと思います。
私もこの時期はそんなことばかりです。でも、ここでしっかり仕込めば、1年大丈夫。
頑張ります。そして頑張らせます。
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