塾の先生なんてしてるから、さも真面目な人であるかのように言われますが、昔から私を知っている人は大笑いするでしょう。私のアホな時代は結構長くて、某作家ではありませんが、実に恥の多い人生を歩んできましたよ、ええ。
若かりし頃。
競馬にドハマリしました。ギャンブル狂と言っても良さげなほどハマり、毎週末2万円を軍資金に中山へ通い、20倍以上の資金を手に返ってきたこともあれば、オケラ街道を東中山駅までトボトボ帰る日もありました。
月曜日に競馬ブックですでに重賞予想を開始。金曜夜、土曜の夜は真っ赤な競馬ブックを作成し、朝10時の第1レースからかぶりつき。そのうち平日の船橋競馬・大井競馬まで行きだしたから、危ない(笑)
その頃夢中になっていたのが「西田式スピード指数」
ダイユウサクの有馬記念を的中させたことで有名になった競馬理論です。
実に面白かったです。
毎週馬柱のデータ分析をかけて電卓をはじいていましたが、そのうちパソコンソフトが出ました。JRA-VANからデータを落とし、ソフトで加工すると、瞬時に馬柱データが取り出せました。ひと晩かけて電卓で計算していたのが一気に楽に。コレを使いたいがためにパソコンを覚え、インターネットを覚えた訳です。 邪念ってスゴイ(笑)
西田式スピード指数は、全レースを1600メートル(1マイル)に統一してスピードを計算。そして各日の「馬場指数」と、レースの「ペース」を加味して指数を計算。有り体に言えば、各馬の過去の戦績を全て「偏差値」化して共通のものさしに並べて比較するという理論。これは塾講師的に非常に納得できる理論で、夢中になりました。
一番印象深かったのは94年の東京・奥多摩ステークス。指数の高かったのは「カズサハリケーン」と「ノーザンプリンセス」でしたが、連下程度の評価でほぼノーマーク。
これは!と思ったのですが、なにせ軍資金がない…
そこで全てをあきらめ、この1点になけなしの3000円をツッコミいざ勝負。
スタートしてレースを見ながらドキドキの新宿Wins。
あれ? いない… オレの2頭…
いくら探してもいないので不安になると、何と大きく離され、ビリとブービー。
終わった… オレの3000円…
そして最後の直線。東京の直線は長いのですが、先頭はナンチャラ、追い上げてくるナンチャラ…
もう関係ねーし…とがっかりしていると、突然実況が大声を上げる…
大外から2頭が連れ立って爆走してくるじゃないですか!
おおおおお!
それが何と!
先頭「カズサハリケーン」、並走する「ノーザンプリンセス!」
ぎゃー! 何とワンツー!
おおおおってなってると、周りのおっさんたちが、「あんちゃん1点で取ってんじゃん!」と。いやいや、どうもどうも、取りました、いやぁ…と払い戻し機の前へ。確定したのが確か5000円台後半。
16万ほどになりました。
若い頃にはありがたい!
馬券を突っ込むと、
「お金を数えております」
という払い戻し機のアナウンス。
「おお!かぞえろ、かぞえろ!」
バンと出たお札をひったくるようにして、急いでWinsを出て、新宿駅のトイレへ。大の方へ駆け込み、1.2.3…とお札を数えたのを覚えています。
この日の私のお財布は、3000→0→16万という推移(笑)
まぁ人間、良いことばかり覚えているものですが、それでもまだ評価が定まらなかった皐月賞のナリタブライアンに単勝で10万ぶっこんで40万になったり、逆に絶対だと思っていたサクラなんちゃらがまさかの落馬とか… いろんなことがありました。
12レースに出てくる、なかなか勝ち上がれない馬「コウチテイオー」、名前が忘れられない「チェリーコウマン」(笑)、最高に好きだった「ツインターボ」、「レガシーワールド」「ビワハヤヒデ」 随分とお世話になりました。
そもそも統計学とか社会学みたいものを総合的に学ぶマスコミ学科卒ですから、数字の読み方みたいなのはとても勉強になりました。数字は一つのエビデンスになるのですが、重要なのはその「素材」ではなく、それが示す意味だと習いました。つまり、その数字が示す意味を読み取らないで、単なるデータだけを取り上げて評価してはいかんということでした。
生徒の偏差値や、試験の得点、そういうものが何を意味するかを考えるようになったのも、もしかするとこの競馬の経験が生きているかもしれません。いくら素点が高くても、相対評価で点数の意味を考えないとだめですね。皆が80点取れている試験で85点とってもさほど褒められませんが、皆が40点しか取れない試験での85点は天才級です。その評価を一元管理するべく登場したのが「偏差値」ですから、偏差値が高いから云々ではなく、単なるその試験での分布位置の把握として、つまり分析ツールとして使うべきだということも、これまた重要なことです。
新型コロナのついても、東京都が発表するデータを拾って見てみると、面白いことが分かります。確かに、PCR検査数が激増してるのです。それに比して感染者数が増えて、ついに3桁に。とんでもない事になっているように見えますが、そりゃ分母を増やせば実数は増えるでしょうね。重要なのは「陽性率」であって、コレに関してはむしろ下がっているように計算できます。重傷者数も少ないですし、死亡者数は0って日もしばしば。
これって、試験の点数ばかりを見て一喜一憂している生徒や保護者と似てるなぁと思うのです。点数の意味、ちゃんと捉えないとね、って。出てきた数字をもう少しちゃんと見れば、もちろん油断はできないものの、そんなに慌てて悲観的になり、ノイローゼになってしまう必要もなさそうに思うのですが。
もうひとつ競馬分析で学んだこと。
数字を一つにしてはいけないということ。
つい、数学とか得意な人は、全てを集約した一つの数字にまとめようとする傾向があります。でも、そこには一つに集約できない様々な要素があるはずです。競馬で言えば、スピード指数の他に、馬場、ペース、騎手、コース適性など様々な要件があります。これを全て数値化し、一つに集約しようとすると無理がある。だから、それぞれを数値化し、それぞれの意味を考えることが重要だと言われました。
学校の成績も同じだなぁと。学業成績はそれだけで評価すればいいのに、通信簿や内申点はここへ、出席や生活態度、人間性などを加えて総合点にしようとしているので実態と合わないところが出てきます。学業は学業、人物は人物と、分けて評価しないと可愛そうです。
若い頃の経験は何でも将来の肥やしになるものですね。
ちなみに、「ギャンブルでは蔵は立たない」ということで、私の競馬人生は終わっております。
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