◆◆第四章◆◆ 「転塾」
「先生、どうしたらいいんでしょう?」
ほとんど無意識にこんな言葉が詩織の口から出た。助けて欲しかった。この苦しさと、罪悪感から開放されたかった。この先生なら、私も含めて正しい方向へ導いてくれるかも知れない… 詩織は一瞬そこまで思ってしまった。しかし、彼から出てきた答えは、全く想像とは別のものだった。
「さあ。結論はご家族でよく話し合って出して下さい。必ずしも転塾すればいい話でもないですし、ウチの塾に来ればいいという話でもありません。ウチの塾がミスマッチである可能性だってあるんですからね。ご家族全員が納得して、同じ方を向いて頑張れることを決めましょう。」
魅力的な転塾コースを提示してくれたら、どんなに楽だっただろうと詩織は思った。「転塾歓迎です」と言ってくれたら、そして「どうぞこちらを」と、すぐに入塾申込書を書かせてくれたら、どんなに楽だろうと思った。しかし、そう言われなかったことで、詩織は少しだけ冷静になれた気がした。よその塾に行けば、転塾さえすれば問題が解決すると思い込んでいた自分がいたが、「ちょっと待て」と言われた気がしたのだ。
素敵でした!
慎ちゃんが宿題をちゃんとやると塾長と約束する面談編も読みたいです!!
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